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「竜の時はよく頬を舐めてくれてたけど、人の姿でそれをされると複雑だな」
「嫌?」
「嫌じゃないよ。竜の時は可愛い。でも人の姿になると別の気持ちが生まれて困る」
「別の気持ち?」
ヒースが俺の頭に腕をまわして位置をずらす。鼻がくっついて、唇が触れられそうなほど近くにくる。唇舐めてもいいかな。俺も人型だとドキドキする。
ヒースが複雑な気持ちって言ってたのが分かった。同じ姿かたちをしているだけで、こんなに緊張するし興奮する。きっと弱いところも気持ちいいところも同じだ。人間は皮膚が弱くて感覚が鋭いから、抱き合ってキスするのは大冒険と同じくらい勇気が必要だ。でもすごくしたい。
唇をぺろっと舐めると、ヒースの唇が開いて舌が舐めとられた。腰の辺りにぞわりと震えるような感覚が走る。そのまま舌を吸われて、腕で身体を支えるのがつらくなった。岩だって持ち上げられるのに力が入らない。重くないか心配になりつつヒースの身体の上に体重をかけると、ヒースのもう片方の手が腰を撫で、そのまま服の下に入ってきて、ひんやりした指先が肌の上を行ったり来たりした。眠る時の優しい触り方じゃなくて、くすぐったいような耐えられない触り方だ。
「くぅ……」
喉がなった。キスしていたヒースが唇を離して笑った。俺、絶対真っ赤になってる。もともと髪も目も赤茶色だけど。
「五歳なのにごめん」
「角が生えてるからもう大人だよ」
「ツノ?」
「うん。小さいけど二つ。だから人間の姿でずっといられる」
「分かった。今度よく見てみるよ。かっこいいな、ツノか」
「竜の世界ではもう大人だからもう一回キスしてよ」
ヒースがさっき目を閉じてたから俺も目を閉じると、頭を撫でられて再び唇が重なった。俺、もしかして発情期なのかも。気持ち良すぎてやめられない。
「ヒース様、お食事をお待ちしました」
キスに集中しすぎて扉がノックされたことに気づかなかった。だからジェイソンの声に驚きすぎて飛び上がった。
「ヒース様?」
「分かった。今行く」
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