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慌ててヒースの身体の上から降りると、二人で顔を見合わせて笑う。なんだかすごく悪いことをしてた気分だ。服と髪を整えたヒースがジェイソンを部屋に招き入れると、トレーの上に乗せられた料理の美味しそうな匂いでお腹がぐうっとなった。
「おいしそう」
「王子のはこちらで、カル、お前のはこっちだからな。間違えるなよ」
「分かった」
「料理や薬、道具類はすべて信頼できる者から調達していますが、くれぐれも用心してください。浴室にお湯を用意してあります。魔法の使用はできるだけ控えたほうがよいでしょう。ケネス様からどんな言いがかりをつけられるか分かりません」
「兄上が王位を継ぐまで大人しくしておけということか」
「城に帰還する準備が整うまではご辛抱ください。エリオット様がどう出るかは予測できませんが」
「エリオットは気が短いが、母親やシエラに酷い態度を取ったことはないはずだ。母親を盾に取られていては何もできないかもしれないな」
ジェイソンはヒースとこれからのことを手短に話し合って部屋を出ていった。
俺は付き人時代を思い出してテーブルに料理を並べる。お茶を注いで、毒味はしないけど、何の魔法も毒もないことは確認できる。
「ジェイソンはカルのことを気に入ってるな」
「何で?」
「なんとなく。ジェイソンは嫌いな相手には必要以上に礼儀正しい」
「俺、ジェイソンのことも大好き。前から渋い声でかっこいいなって思ってたんだ」
「そうだよな。すごくかっこいいのに、誰とも付き合わないし結婚もしない。ずっと俺の面倒ばかり見て、時々それが申し訳なくなる」
竜の時にお城のおばちゃんたちがよく話してたけど、ジェイソンはヒースのお母さんが好きだったんだよな。だから誰とも付き合わないのかな。
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