誓約

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 ドラゴン姿で浴槽を駆け回って水浴びしていると、勢い余って壁に激突してしまった。そして何か赤いものがぽろっと取れた。  なんだこれ、まさかツノ? それでなくても短いツノなのに、なくなったら子供に間違われちゃうよ。  でもよく見たらツノよりもっと薄くて半透明な丸いものだった。これは鱗かな。俺にも頭と背中と尻尾には少しだけ鱗がついてるし。 「カル、すごい音がしたけど大丈夫か?」  振り向くとヒースが心配そうに戸口から顔を覗かせていた。 「キュー」  大丈夫だと告げたけど、ヒースは布をもって入ってきた。両手で抱き上げられて頭とか尻尾とか背中をチェックされる。こんなに見られると竜の姿でも少し恥ずかしい。 「カル、少し大きくなったな。翼も前より大きくなってる。それに本当にツノが生えてる。小さいけど二つ。深い赤色で宝石みたいだな」 「キュッ」 「これは……? ぶつけてここの鱗が落ちちゃったのか」 「クェーアアウー(ヒースにあげるよ)」 「そうかそうか、痛かったな」  やっぱり竜だと言葉は通じないな。でもヒースは自分の服が濡れるのもかまわずに浴槽に腰掛けると、そのまま俺を洗ってくれた。普段気にしたことのない爪の間や尻尾の先まで丁寧に。 「前から思ってたけど、カルは綺麗だな」 「キュッ⁉︎」 「こんなに綺麗な生き物がいるとは思わなかった」  俺はヒースの方が何倍も美人だと思うんだけど。 「ほら、できたぞ」  泡を洗い流すと、乾いた布で包まれてごしごし拭かれる。終わるとそのまま寝室まで運んでもらえた。ベッドに寝かされたタイミングで人間に戻ると、ヒースが慌てて目をそらした。 「洗ってくれてありがとう。お風呂の掃除しとくよ。どうしたの? ヒース」 「いや、急に人間に戻るとびっくりするな」 「そう?」 「それに裸だし……」 「竜の時も裸だけど」
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