誓約

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 でも俺も人間姿の裸のほうが恥ずかしい。ウロコも無いし、まえに学園のお風呂場で確認したけど、俺って職場の従業員たちと比べても、もちろんジークさんと比べた時も、つるんとしていて貧相なんだよなぁ。一応オスなんだけど、オスを象徴するものもそんなに大きくないし。  考えると恥ずかしくなってきたので大急ぎで下着を身につけた。 「ヒース、落ちたウロコあげる。お風呂の掃除してくるね」 ***  少し思い出した前世の記憶では、人間は男同士でも交尾していたような気がする。子供ができるかは分からないけど、同性の恋人同士は間違いなくいたはずだ。異種族の恋人は分からないけど、この世界なら竜と人が付き合うこともあるってクラウスが言ってた。だから、俺とヒースも付き合えるってことだよな。ヒースが俺で良ければ、だけど。  ごしごしと雑念を振り払うようにお風呂場を掃除して、それから寝室に戻ると、部屋は蝋燭の灯りだけがついていて、ヒースがベッドに座り、巻物を片手に考え事をしていた。あれはケネスに渡された誓約書だ。 「ヒース、誓約書に名前を書くの?」 「まだ悩んでる。他にいい方法が思い浮かばない。署名したらケネス兄上は俺に何をさせるつもりだろうか」 「わからない」  きっとろくでもないことだと思うけど、それはヒースには言えなかった。 「そうだな。カル、そろそろ寝ようか」 「うん。竜の姿と人の姿、どっちがいい?」 「バレると危険だから、人の姿……それはそれで危険かな……」 「危険?」 「ああ、いや。なんでもない。カルの楽な方で」 「じゃあ人の姿で。ヒースと手を繋いで眠りたい」  竜も捨てがたいけど、話ができる方がいいかな。そう思ってヒースの隣に潜り込んだ。
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