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「ああ。母上とジェイソンはお似合いだったよ。父上がいなければ、きっと幸せな夫婦になれたと思う。父上に気に入られたせいで、母上には自由がなくなった。俺は王族の一員だけど、そんなことに権力を行使したくないし、不本意な命令にも従いたくない。でも、無理だな。俺にも自由がない」
何も答えられなくて、かわりにヒースの腕をぎゅっと握った。俺が自由にしてあげたい。
「ケネス兄上が王位を継承すれば、この軟禁状態も終わり城に帰れると思う。誓約書には署名したくないけど、ほかに皆が助かる手段がなければ仕方がない。だから」
「だから?」
「もしも俺が兄上に逆らえなくて、カルに何か酷いことをしようとしたら、育ての親のところに逃げろ。いいな?」
「ヒースはそんなことしないよ」
「魔法の誓約はかけた術士が死ぬか解除するまで効果があるんだ。だから絶対に逆らえない。もしもカルが竜だとバレたら、きっと昔みたいに囚われてそのまま飼い殺しにされる。それだけはやりたくない。だから、逃げてくれ」
「俺、ヒースのそばから離れないよ。だって大好きなんだ」
「知ってる。俺も好きだよ。竜のカルも、人間だと思っていたカルも、両方好きになってた。だから言うことを聞いてくれ」
「分かったよ」
そういうと、ヒースは安心したように俺の髪にキスをした。
ゆっくり魔法の息を吐いて、ヒースを眠らせる。ヒースにはまだ言ってない。俺が詠唱なしで魔法を使えること。
ヒースが眠ったのを確認してから起き上がると、窓を開け、ネズミほどの大きさの竜になって外に出る。俺はヒースみたいに優しくない。ヒースの自由を誰かが奪うなら戦って奪い返す。だって俺は火竜だから。
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