王族と竜

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 ケネスは戴冠式の直後に、ヒースとエリオットに誓約書に署名するように要求している。もしもヒースやエリオットがそれを断れば、王への叛逆として投獄され、住んでいた城や街への攻撃もあるという話だ。 「エリオットは署名するだろうか」 「分からない」  ヒースが一番心配しているのがこれだった。エリオットが署名せずに反逆者だと言われてしまったら、ヒースは国王ケネスの命令で兄と戦わなければいけなくなる。  宮廷魔道士がついている以上、エリオットには勝ち目がないと言うのが王城にいる大多数の意見だった。それはエリオットとヒースが二人でケネスに対抗しても変わらない。王城にいるエリオットの私兵もヒースの部下も数十人程度しかいない。普段から仲の悪い兄弟同士だから、連携だってとれるはずがない。宮廷魔道士が連絡通路を閉鎖していたのだからなおさらだ。  でもね、ヒース。  俺は心配そうなヒースの横顔を見ながら考える。  エリオットは署名しないと思う。性格もアレだし。それにエリオットには秘密兵器がある。だから式典のどこかで必ずケネスに対抗するはずだ。  俺の目的は一つ、署名なんてさせずにヒースを安全にこのお城から逃すこと。万が一間に合わなくてヒースが署名してしまったら、宮廷魔道士を倒す。そのためにこの数日間、眠らずに計画を立ててきたんだ。必ず成功させてみせる。ヒースのために。  
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