王族と竜

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「俺は若く見えるけど、俺の種族ではもう一人前なの。ジェイソンが思うより足手まといにはならないはずだよ」 「数日前に腹を刺されたばかりだろう。せっかく拾った命をここで落とす必要はない」 「お腹を刺されたくらいじゃ死なないよ。毒は厄介だけど、今回は飴玉を持ってきてるから」 「お前が何を言っているかさっぱりわからん」  ジェイソンは怒っていたけど、俺がついてくるのは止めなかった。控室は大聖堂の横にある小部屋で、聖堂に続く扉の前には兵士がいるからヒースがよく見えない。部屋も狭いし、ジェイソンと俺の他に誰もいない。  代わりに戴冠式のおこなわれる大聖堂には大勢の兵士や魔法使い、貴族たちがいた。これが全部ケネスの配下なのかな。ヒースは祭壇近くの前の方の席にいる。目を閉じて気配を探っても、エリオットの気配はよくわからない。いないのかも。ケネスと宮廷魔道士もまだ来てない。 「何かあればすぐに飛び出していってヒース様を助けるぞ」 「宮廷魔道士が攻撃してきたらどうするの?」 「それが厄介だ。あの男の魔法には誰もかなわない。うまく避けるしかない」 「ジェイソン、防御や回復魔法は?」 「その二つを使えるのはシエラ姫くらいだな。あとはみんなおまじない程度だ」 「分かった。何かあったら俺が助けるよ」 「カル、お前まさか魔法が使えるのか」 「内緒だけど竜なんだ」 「それが本当だったらどんなにいいか。五年前のように竜が盾になってくれたら、ヒース様も助けられる」 「あの時みたいなヘマはしないよ。もう角も生えたし」  ジェイソンさんが絶句して俺を見る。  ちょうどその時、大聖堂から音楽がもれ聞こえてきた。ケネスと宮廷魔道士の登場だ。いよいよ戴冠式が始まる。
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