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「ケネスと宮廷魔道士が入ってきた。防御魔法か何かを使ってる。エリオットの姿は見えないけど、呼ばれてないのかな」
「お前見えるのか?」
「見えるよ。広範囲は無理だけど、この大聖堂とその周辺くらいなら誰が何をしてるか分かる」
「本当に五年前の、あの時の竜のカルなのか?」
「そうだよ。ジェイソンは竜の俺にもヒースを守れって言ってただろ? ちゃんと返事してたんだけど、あの時は言葉が通じなかった」
「ではエリオット様の髪を燃やしたことがあるか?」
ジェイソン、そんな昔のことを覚えてたのか。
「あの時はエリオットが風の魔法で攻撃してきたから、軽く反撃したんだ。エリオットはいまだに後頭部に小さいハゲがあるよ。この間見たんだ」
「そうか……にわかには信じられない話だが、どうやら本当らしいな。それで腹を毒の剣で刺されてもすぐに復活できたんだな。ヒース様はご存知なのか?」
「この間話した。ジェイソンよりびっくりしてたけど」
「こう見えて私も驚いている。竜というのは、底知れないな」
目を閉じて戴冠式の様子をさぐる。ヒースはずっと椅子に座っていて、誰かが長い言葉を話してる。ケネスと宮廷魔道士は壇上で何かしてる。多分王冠でもかぶってるんだろうな。
聖堂の外の方にエリオットらしい気配を感じて意識を外に向けた。エリオットを先頭に大勢の人がこっちにやってくる。大聖堂入り口にいる警備兵も集まりはじめていて、思ったより早く兄弟同士の大げんかに発展しそうだ。
「どうだ? 何か変化はあるか」
「ここを目指してエリオットが大勢の兵とやって来てる。ケネスの配下と睨み合いみたいになってるよ」
「何だと? 遅れて戴冠式に参加するつもりか?」
「みんな殺気立ってるよ。座って見学する気はなさそうだ」
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