王族と竜

6/15
前へ
/262ページ
次へ
「ケネスと宮廷魔道士が入ってきた。防御魔法か何かを使ってる。エリオットの姿は見えないけど、呼ばれてないのかな」 「お前見えるのか?」 「見えるよ。広範囲は無理だけど、この大聖堂とその周辺くらいなら誰が何をしてるか分かる」 「本当に五年前の、あの時の竜のカルなのか?」 「そうだよ。ジェイソンは竜の俺にもヒースを守れって言ってただろ? ちゃんと返事してたんだけど、あの時は言葉が通じなかった」 「ではエリオット様の髪を燃やしたことがあるか?」  ジェイソン、そんな昔のことを覚えてたのか。 「あの時はエリオットが風の魔法で攻撃してきたから、軽く反撃したんだ。エリオットはいまだに後頭部に小さいハゲがあるよ。この間見たんだ」 「そうか……にわかには信じられない話だが、どうやら本当らしいな。それで腹を毒の剣で刺されてもすぐに復活できたんだな。ヒース様はご存知なのか?」 「この間話した。ジェイソンよりびっくりしてたけど」 「こう見えて私も驚いている。竜というのは、底知れないな」    目を閉じて戴冠式の様子をさぐる。ヒースはずっと椅子に座っていて、誰かが長い言葉を話してる。ケネスと宮廷魔道士は壇上で何かしてる。多分王冠でもかぶってるんだろうな。  聖堂の外の方にエリオットらしい気配を感じて意識を外に向けた。エリオットを先頭に大勢の人がこっちにやってくる。大聖堂入り口にいる警備兵も集まりはじめていて、思ったより早く兄弟同士の大げんかに発展しそうだ。   「どうだ? 何か変化はあるか」 「ここを目指してエリオットが大勢の兵とやって来てる。ケネスの配下と睨み合いみたいになってるよ」 「何だと? 遅れて戴冠式に参加するつもりか?」 「みんな殺気立ってるよ。座って見学する気はなさそうだ」
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1604人が本棚に入れています
本棚に追加