王族と竜

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「そうか、やはりエリオット様は」 「エリオットだね」  二人で顔を見合わせた。エリオットは絶対にケネスに従う性格じゃないと思ってた。 「ここにいる場合じゃない。ヒース様のそばに行って守らなければ」  控室から出ようとしたら、一歩も進まないうちにすぐに兵士に止められた。 「戴冠式が終わるまで控室から誰も出すなと言われています」 「それどころじゃなくて、エリオットが……ん?」 「どけ、カル。私がやろう」 「待って」  この警備兵、どこかで見たことがある。このヒゲ面の顔。重装備だから気づきにくいけど、上半身裸になったら毛むくじゃらのはずだ。 「ようやく室内の警備に配属されたんだね。それとも今回だけかな。まあいいや。あの時はありがとう」  ヒゲ面の警備兵は困惑した表情を浮かべた。そういえばあの時はネズミみたいな大きさで、しかも本人には気づかれてないから分かるはずないか。  このおじさん、五年前に俺が牢屋を脱出する時に頭の上に乗せて移動させてもらった毛むくじゃらのおじさん兵士だ。顔見知りだし怪我させるのも悪い。   「ジェイソン、少しのあいだ控室に下がってて」  呪文を思い浮かべながら魔法の息を吐く。ヒゲ面のおじさんをはじめ、周辺にいた兵士たちのまぶたがゆっくりとさがり、バタバタとその場に倒れた。みんな眠っている。 「何だ?」 「どうした⁉︎」 「ジェイソン、今のうちに行こう」 「分かった」  騒ぎが大きくなる前にヒースのところまで辿り着きたい。別の兵士達に囲まれたと思った直後、爆音とともに大聖堂の扉が開かれた。みんなの意識がそちらに向かう。立っていたのは大勢の兵士を連れたエリオットだった。 「戴冠式は即刻中止しろ。兄上には先王を毒殺した罪を償っていただく」
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