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「誰かと思えば、エリオットではないか。私の邪魔をするなら反逆とみなすが……いいのだな」
壇上にいたケネスが、静かだがよく通る声でそう言った。壁際にいた兵士たちが一斉に弓を構えてエリオットに狙いを定める。戴冠式に参列していた少数の貴族たちから悲鳴が上がった。
「反逆? 最初から殺す気だろうが!」
エリオットが従えていた兵士たちが一斉に剣を抜き、盾でエリオットを守るように周りを取り囲む。後方にいた魔法使い達も杖を構えて一触即発の雰囲気だ。誰かの最初の攻撃で戦闘が始まる。
「やめて!」
叫んだのはシエラだった。前方にいる。ヒースの近く。
「お兄様、お願い。戦いはやめてちょうだい」
「シエラ、お前は引っ込んでいろ!」
エリオットがそう言った瞬間、シエラが倒れる。誰かの放った矢が胸に刺さっていた。
「シエラ!」
「シエラ様!」
近くにいたヒースがシエラに駆け寄るのが見えた。矢が雨のように降ってくる。ヒースの氷の魔法が壁を作りあげ矢を防ぐ。
その間に兵士たちの間を走り抜けた。はやく二人のもとに行きたい。大聖堂をエリオットの風の魔法が襲い、天井近くの装飾品や柱の一部が落ちてくる。戦闘が始まってしまった。
「ヒース! シエラ!」
俺の前にジェイソンが走りでて、行手を塞いでいる兵士たちを長剣でバタバタとなぎ倒す。ジェイソンさんは人間なのに力が強い。以前怪我をした腕を庇っていても十分な攻撃力だ。
熱を感じて頭に防御の呪文を思い描く。魔法の息を吐き、自分を中心に防御魔法を張り巡らせた。直後に頭上から熱を持った岩の塊が降ってきた。火の玉みたいなものだ。防御魔法のおかげで熱を少し感じる程度ですむ。ただし俺の防御魔法の範囲内だけ。これは宮廷魔道士の魔法だな。
大量の火の玉は矢の雨よりきつい。悲鳴と怒号と、それからうめき声。バタバタと倒れる兵士たち。悪いけど全員は救えない。
ヒースのもとにたどり着いた。ヒースはずっと倒れたシエラのもとで回復魔法をかけ続けていた。血だまりができていてシエラの意識がない。ヒースは真っ青だ。手が震えてる。
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