王族と竜

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「カル、ジェイソン……シエラが」 「ヒース、代わるよ」  シエラを抱き上げて胸に刺さった矢に手を添える。目を閉じるとシエラの光がごく弱くなっているのがわかった。魔法の息を吐き、回復呪文を唱えると、周りが光に包まれた。ゆっくりと矢を抜き、それを床に落とした時にはシエラの傷は完全に癒えていた。 「すごい……!」 「もう大丈夫だよ」 「カル、ありがとう。シエラを救ってくれて」 「俺もシエラが大好きだから」  ヒースが氷で作り上げた壁はトンネルのような形状に変化したため矢と火の玉を防ぎ、緊急の避難通路になっていた。貴族たちが殺到してる。そこにいた魔法使いの女性たちにシエラを任せて大聖堂の外に逃がす。火の玉の魔法で氷のトンネルはあと少ししかもちそうにない。 「カル、お前も逃げろ!」 「俺は平気。二人を守るよ」 「ヒース様が先に避難を」  シエラに気を取られているうちに戦況が変わっていた。宮廷魔道士一人にエリオットの兵士たちが苦戦してる。入り口付近に追い詰められていた。その間に壇上から降りてきたケネスがヒースに巻物を投げる。誓約書だ。 「命令だ。お前も反逆者どもを捕らえろ」  ヒースはケネスを睨みつけた。 「兄上、なぜ関係ないシエラまで……」 「黙れ。シエラはエリオットを支持している。敵に回復魔法を使われると厄介だ。命令に従わないならお前も反逆者とみなして排除する。いいのか? お前の領地にいる村人もみな同罪だぞ」 「兄上!」 「やりたいんなら自分でやれよ。ヒースを巻き込むな!」  あんまり頭にきたので飛び出していって文句を言ってしまった。ケネスの顔色が変わる。 「そうか、お前も私に逆らうというのだな。いいだろう、お前の領地も焼き払ってやる」
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