王族と竜

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 ヒースの領地も?   ということはつまりエリオットの領地は焼いたってことか。それならエリオットが怒るのも無理はない。もしかしたら、もうすでにヒースのお城が攻撃されているのかも。 「ヒース、城を守りに行こう!」  振り返ってヒースの手を取る。 「この城から出られると思っているのか」  ケネスは余裕の表情だ。あの宮廷魔道士はたしかに厄介だけど、全力で飛行すれば大丈夫な気がする。今はエリオットの方に集中してるし。エリオットの命は保証できないけど。 「無理だ、カル。王城にはまだ兵士が何万といる。ここからは出られない。俺は……」  言いながらヒースが床に座り込んだ。 「兄上、領地の者はお許しください。エリオット兄上にもどうか慈悲を」  ケネスは床に落ちた誓約書を拾い上げ、ヒースに突きつけた。 「そう思うならこれに名前を書け。お前は見た目がいいから、私に忠誠を誓うなら生かしておいてやる。領地など気にするな。どうせお前と一緒に隣国の金持ちにくれてやるつもりだ。魔物の多い生産性のない土地だからな」  顔を上げたヒースの前で誓約書が炎に包まれた。魔法の誓約書が焼けるほどの高温にケネスが慌てて手を引っ込める。 「逆らうのか」 「ヒース、こんな奴の言うこと聞かなくていいよ」 「カル」 「ジェイソン、ヒースを頼むよ。俺がこいつをぶん殴る。よくも俺の大好きなヒースを傷つけたな」  誓約書を燃やしたのは俺。ヒースに恨まれてもケネスは絶対にボコボコにしてやる。  慌てて後退りするケネスとその周りを守ろうと取り囲む兵士たち。邪魔だ。襲ってきた全員の手足や鎧を掴んで壁際に投げ飛ばした。怒っているから手加減できない。 「ダリ! こいつらを先に殺せ!」
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