王族と竜

12/15
前へ
/262ページ
次へ
 中庭に出ようとして大勢の兵士に行手を阻まれた。たしかヒースがまだ何万人もいるって言ってたけど、みんな戦意喪失して逃げまどっている。 「逃げろ!」 「殺される!」 「どけ!」 「なんで竜が……!」 「何があったんだ」  ヒースがつぶやくと同時に地面が揺れた。叫び声が大きくなる。 「竜だ! 竜が来るぞ!」  逃げている兵士が口々に叫ぶ。中庭から大きな咆哮が響いて思わず駆け出した。 「カル!」  中庭にいたのは岩山ほどもある一頭の大きな竜。皮膚はゴツゴツしていて硬く、弓矢も全く刺さらない。吼えては地面を足で踏み荒らしているだけなのに、驚きすぎた人間たちは必死になって逃げてる。 「ジークさん……」  懐かしいジークおじさんだ。ずっと山から降りてこなかったのに、王城に来てくれたんだ。 (おじさん……!) (カルか。人間の住む建物は、竜の姿には小さすぎるな) (おじさん、ありがとう。俺のために来てくれたんだね) (子供同然のお前を傷つけた人間がいると聞いてな。少し暴れたら帰るから気にするな) (うん。ジークさんやっぱりかっこいいよ)  念話でそういうと、ジークさんは張り切って咆哮をあげた。音波で壁にヒビが入りそうな勢いだ。 「あ、あれもお前の知り合いか」 「そう。俺の師匠なんだ」 「カルが味方でいてくれて良かった。寿命が縮むな」 「ヒース、お城に行こう。俺が連れて行くから」  頭の中で解けろと念じると、すとんと竜の姿に戻った。小さな竜になって服から這い出ると、そこから人が乗れるサイズまで大きくなる。それでもジークさんやクラウスよりずっと小さいけど。翼を広げてヒースが乗りやすいようにお座りする。 「カル、もしかして、乗っていいのか?」 「キュイ!」 「ありがとう。領地まで頼む」
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1604人が本棚に入れています
本棚に追加