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中庭に出ようとして大勢の兵士に行手を阻まれた。たしかヒースがまだ何万人もいるって言ってたけど、みんな戦意喪失して逃げまどっている。
「逃げろ!」
「殺される!」
「どけ!」
「なんで竜が……!」
「何があったんだ」
ヒースがつぶやくと同時に地面が揺れた。叫び声が大きくなる。
「竜だ! 竜が来るぞ!」
逃げている兵士が口々に叫ぶ。中庭から大きな咆哮が響いて思わず駆け出した。
「カル!」
中庭にいたのは岩山ほどもある一頭の大きな竜。皮膚はゴツゴツしていて硬く、弓矢も全く刺さらない。吼えては地面を足で踏み荒らしているだけなのに、驚きすぎた人間たちは必死になって逃げてる。
「ジークさん……」
懐かしいジークおじさんだ。ずっと山から降りてこなかったのに、王城に来てくれたんだ。
(おじさん……!)
(カルか。人間の住む建物は、竜の姿には小さすぎるな)
(おじさん、ありがとう。俺のために来てくれたんだね)
(子供同然のお前を傷つけた人間がいると聞いてな。少し暴れたら帰るから気にするな)
(うん。ジークさんやっぱりかっこいいよ)
念話でそういうと、ジークさんは張り切って咆哮をあげた。音波で壁にヒビが入りそうな勢いだ。
「あ、あれもお前の知り合いか」
「そう。俺の師匠なんだ」
「カルが味方でいてくれて良かった。寿命が縮むな」
「ヒース、お城に行こう。俺が連れて行くから」
頭の中で解けろと念じると、すとんと竜の姿に戻った。小さな竜になって服から這い出ると、そこから人が乗れるサイズまで大きくなる。それでもジークさんやクラウスよりずっと小さいけど。翼を広げてヒースが乗りやすいようにお座りする。
「カル、もしかして、乗っていいのか?」
「キュイ!」
「ありがとう。領地まで頼む」
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