王族と竜

13/15
前へ
/262ページ
次へ
 ヒースが俺の背中にまたがる。夢が叶ってドキドキする。生まれた時からいつか二人で飛行したいと思ってたんだ。  尻尾を振っているとジェイソンも乗ろうとしたので素早く移動して振り落とす。まだ小さいから二人乗りは無理だし、俺はヒースだけを乗せるんだ。 「ジェイソンは後から来てくれ」 「分かりました。カル、ヒース様を落とすなよ!」 「キュー!」  翼を広げて魔法の息を吐く。風を作って低空から滑るように空へと向かう。飛び立つ最中に、近づいてくる魔獣の気配をとらえた。黒い馬のような姿で障害物を飛び越え中庭に向かってくる。 (ゲイル!) (ドラゴンが暴れているときいてケンブツにきた) (ちょうど良かった。そこにいるジェイソンを乗せてお城に来てよ!) (なんだと? 俺は強いニンゲンしか乗せん) (ジェイソンは強いよ)  王城を離れる直前に、ジェイソンが中庭の方に突進して来た黒い暴れ馬に飛び乗るのが見えた。  ゲイル、俺は全然乗せてくれなかったのに、ジェイソンさんは乗せるんだな。 ***  二頭の竜と大勢の兵士と魔法の戦いに別れを告げ、気流に乗って王城をあとにする。城も王都も小さくなって後方に遠ざかり、だんだん見えなくなった。  ヒースはぎゅっと俺の背にしがみついてる。落とさないようにゆっくりと高度を変え、できるだけ揺れないように飛行した。ヒースの身体が冷たい。魔法の使いすぎだ。 「カルは暖かいな」  首にしがみついたヒースがそう呟くのが聞こえた。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1604人が本棚に入れています
本棚に追加