王族と竜

14/15
前へ
/262ページ
次へ
 スピードを上げて飛行する。ヒースはずっと俺の背中にもたれかかっていたから、途中から魔法の息を吐き回復魔法を唱えた。少しでも元気になって欲しい。 「カル、お前の育った城覚えてるか?」 「キュー」 「北の方の、寒い場所にあるんだ。近くには魔物の住む森や湖しかない辺境だけど、俺には懐かしい故郷なんだ」 「キュー」 「焼け野原にはさせたくない」  分かってるよ。ヒース。全力で飛べばもう少しで到着できる。着いたらケネスの部下たちなんて全部俺が追い払ってやる。  半年以上働いたケセルジュの魔法学園が見えてきた。懐かしいな。トムや洗濯場のみんな元気で働いているかな。ハロルドやヴィクターは相変わらずかな。付き人になれて本当に楽しかった。  さらに進むとペシルの町がある。人間に変身する練習のため、宿に泊まったり買い物したりしたよな。ペシルを過ぎると大きな山があって、ジークさんの小屋や谷がある。進路は少しずれるけど、北に進めばヒースのお城がある小さな町が見えてくるはずだ。 「キュー」 「お城だ」  兵士がいる。複数の兵士と馬がいて、町と城を取り囲んでいる。豆粒みたいな大きさでもその光景が見えた。まだ焼け野原にはなってなくてほっとする。囲まれてはいるけど、攻撃は受けていないみたいだ。 「キュイ!」 「分かった。カル、行こう!」 「キュイーーー!」  ジークさんのように咆哮とはいかなかったけど、スピードを上げて高度を下げ村の上空を旋回する。空から現れた竜の襲撃に驚いた馬のいななきと兵士たちの悲鳴が響く。火竜らしく口から魔法の息を吐き、燃えない程度に炎を降らせたら、城を取り囲んでいた兵士たちは全員慌てふためいて逃げて行った。 *** 「ただいま。みんな無事だったか?」  腰を抜かしていた村人たちも、クワや鎌を持って城に籠城していた従者たちも、竜からおりてきたのがヒースだと気づくと、わっと駆け寄ってきた。 「ヒース王子様!」 「ぼっちゃま!」 「おかえりなさい!」 「よくご無事で!」
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1604人が本棚に入れています
本棚に追加