エピローグ

2/7
前へ
/262ページ
次へ
「カル、準備出来たか?」 「う、うん。変かな」  クラウスが頭の上からつま先まで俺の姿を眺める。 「まあまあだな。やっぱり短期間では俺のようには無理か。まだまだチビだからな」 「クラウディアさんと比べないでよ。これでも頑張ったんだ」 「そうだな。まあよく出来てる。喉仏もない、肩幅もない。普通の人間なら気づかないだろう。胸はないが」  そう言われて鏡に映る自分の姿を眺める。少しだけ伸ばした赤い髪が頭の上で結われてる。そこには金色の髪飾り。みんなに着せられた赤いワンピースみたいな服にはカラフルな刺繍がほどこされていて、首には綺麗な石の連なったネックレス。足元には履き慣れない小さな靴。  クラウスが言ったみたいに、喉仏はなくて肩幅も丸くて、全体にまるみを帯びてるから本当に女の人に見える。自分じゃないみたいだ。ただし胸を大きくするのは俺には無理だった。それにドレスの下にはちゃんとオスの象徴もついてる。着飾ってもそれほど美人に見えない。もとが俺だから。 「まあ胸は詰め物でごまかせるだろう。今日だけ参列者を騙せば問題ない。なにしろヒース王子様が娶るのは、少数部族の姫君、ということになってるからな」  娶ると言われて真っ赤になった。 ***  エリオットが国王になってから三年が経っていた。あんなに攻撃的で偏った性格のエリオットなのに、国全体は落ち着きを取り戻し、けっこううまくいっていた。  ヒースは十八歳になり、以前よりずっと大人っぽくなった。美人で優しいのは前と同じだけど、精神的に落ち着いたのか魔力のコントロールも含めて危うさがなくなった。  俺も八歳になった。といっても五年は仮死状態だったから感覚的には三歳だ。それでも人間に変身した時の背が少しだけ大きくなり、ツノもほんの少し伸びた。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1604人が本棚に入れています
本棚に追加