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鏡を見ながら表情を取り繕っていると、扉がノックされて本物の可愛い姫君が部屋に入ってきた。桃色のドレスを着ていて部屋が華やかになる。
「シエラ!」
「カル、久しぶりね。会いたかった!」
「俺も。来てくれたんだね」
シエラと抱き合って再会を喜ぶと、シエラは少し離れて俺をまじまじと見た。
「カル、本当に女の子に見えるわ。とっても可愛いわよ」
「変じゃないかな」
「お兄様はカルが男でも女でも竜の姿でも大好きだと思うわ」
「そうかな」
「種族も性別も超えた恋なんて、素敵ね……」
「あ、ありがとう……」
今でもヒースと結婚式をあげるなんて信じられない。ヒースは俺を大事にしてくれたけど、いつか顔も知らない相手と結婚しなきゃならないってずっと言ってたから。
「盛り上がっているところ悪いが、そろそろ移動するか?」
「うん」
「カル、また式の時に会いましょうね。ヒースお兄様と会場で待ってるわ」
シエラと別れたあと、頭からベールを被り、マントを羽織って部屋を出る。クラウスと部屋の外に控えていたウィルと一緒にお城の地下へ。ヒースのお城に昔から作られていた避難通路を使って近くの森へと移動した。
森の中にはテントがはられ、華やかな馬車と、着飾った従者たちが待っていた。この人たちは全員クラウスの商売仲間って話だけど、何人か竜も混ざってると思う。感じる魔力が人間と違う。
「今日一日よろしく!」
「こちらこそ」
「姫君らしく見えますな」
「おい喋るな、声は低いんだからな」
「分かってるよ」
みんなに挨拶をしていると、テントのそばに立っているジークおじさんが見えた。
「おじさん! 来てくれてありがとう」
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