別れ?

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 兵士の一人が口を掴む。 「おい、口開けろ」  うーん、開けたくない。でもヒースが人を傷つけるなって言ってたし、今ここで戦って勝ち目はあるだろうか。殺す気でやらないと逃げられない気がする。兵士二人を真っ黒焦げにしたら、ヒースはきっと責められるだろうな。  仕方なくパカっと口を開けたら口の中に何かが放り込まれた。意外と美味しい薬だ。多分身体には悪いんだろうな。でも毒じゃないはず。殺すなって言ってたし。 「キュウ~」 「大人しくしてろよ」  眠くなってきた……。きっと眠り薬だ。眠るくらいなら解毒する必要はないか。どうせ明日の祭典が終わるまでヒースも王城から帰らないんだろうし。でも、ヒースのそばで眠りたかったな。一生懸命練習してたのに、ヒースが祭典で魔法を使うところも見られないのかな。 ***  あれからどれくらい時間が過ぎたんだろう。目を覚ましても灯りのない暗い牢屋の中じゃ時間が分からない。  頭がぼんやりしてる。薬のせいかな。ブルブルと身震いをして、立ち上がった。首輪と鎖がジャラジャラ鳴る。誇り高き竜(自称)なのにこの扱いはあんまりだ。 「キュイキュイ」  よく見たら牢屋の中にご飯があった。汚いお皿の上に生肉が乗せられてる。あと水路に続く窪みに水が注がれていた。なんだか不味そうな水だな。  とりあえず炎の魔法を思い浮かべ、口から火を吐いて皿の上の肉を程よく焼いてみた。寄生虫とかいたら嫌だから念入りに火を通す。ついでに水もお湯にしてみた。水をお湯にするのは肉を焼くより難しい。でも少しはマシになったかな。
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