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(あれ? 反応がなくなったよ)
「悪いけどしばらく休憩する」
(ヒース様、気長に待ちましょう)
(そうだな)
チート能力あっても卵の殻も割れないんだな。いや、それくらい自力でなんとかしろってことなのかな。白ずくめのおっちゃん、適当に採用スタンプ押してただけなのかもしれないし、そもそもあの嘘っぽい接客トーク、どこまで信用していいのか分からない。
そんなことを考えながらうとうとしていると、急にヒースでもジェイソンでもない誰かの声が聞こえた。ガタガタという激しい音も。こういう大きな音は過去の経験からいって、あまりいい状況じゃない。
(なんだよ、勝手に入ってくるな!)
これはヒースの声。
(本当に卵あるんだな。トカゲなんか育ててどうすんだよ。お前、母親が死んで頭おかしくなったんじゃねえの)
トカゲに決定されてる。鳥かもしれないだろ。この声も子供みたいな声だ。意地悪なこと言うやつだな。
(エリオット様! 乱暴はおやめください!)
(放せよ!)
うわっ、また揺れてる。もう卵の中はぎゅうぎゅうだからそこまで回転しないけど、振動が伝わってくる。
(へへっ、お前のタマゴ、俺が料理長に渡してトカゲの卵料理にしてやるよ。夕食を楽しみにしとけよ!)
(返せ!)
えっ、卵料理⁉︎
まずい、トカゲ人生、いやトカゲ生の最大の危機だ。フルパワーで回避しよう。
力を込めて卵の殻をつつくと、ピシッと亀裂が入ったような音がした。
(熱っ!)
うわわわ。
急に身体にかかる重力を感じて叫ぶけど、なすすべがない。
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