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直後、これまでで一番の衝撃が襲って来た。どこかに衝突したらしく、身体中が痛い。卵の殻がなければもっと酷い事になってたと思う。
目の前のぼんやり明るかった世界に亀裂が走り、音を立てて崩れる。刺すような眩しい光に目が眩んで、何が起こったか分からない。生ぬるい水分は乾いた風が身体から奪っていった。水がなくなって空気が押し寄せてくる。息をしないと。どうやってするんだったか分からない。そもそも口呼吸なのか?
「卵が!」
「うわっ、割れた!」
ヒースの声が鮮明に耳に届く。身体をバタバタさせ、声を出そうと必死になる。何か喉に詰まってるみたいで声が出ない。息もうまく吸えない。死ぬ!
「気持ちわる! やっぱりトカゲかよ」
「エリオット様、それ以上乱暴をされますとお父上に報告いたします」
「従者のくせに生意気な口きくな」
よく見えないけど、二人分の声が遠ざかっていった。
それからふわりと柔らかい布で包まれて、顔や口のあたりをごしごし拭いてもらえた。
「大丈夫か? 息できるか?」
うえっ。
布で拭いてもらえたおかげか、口からなんか出た。息も吸える。呼吸の仕方をやっと思い出して、なんとか助かった。
「落ち着け。回復魔法かけてやるから」
ヒースの腕に布ごと抱かれて、あの極上の回復魔法に包まれる。気持ちいい。
ヒース。
名前を呼んでみたつもりなのに、口からはキュイ、という声だけが出た。
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