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最後の場所
「さあ、着いたよ、どうぞ」
「うん…… ここ……」
「ここ、どこだかわかる?」
車の中から見ている目の前のこの建物、見覚えがある。それに、近くの川も。多分、川沿いの木は桜。その向こうに、商店街らしきもの。駅の近く?やっぱり、ここ、駅だ!私たちが通った小学校がある、地元の駅。
18の時、義也とデートした桜並木だ!この建物は…… そう!お団子買ったお店だ!でもお団子屋さんじゃないみたい。
「ここ、お団子屋さんでしょ!あの時の!」
「そう!よくわかったね。今はお団子屋さんじゃないんだけど、建物はそのままなんだって」
「そうなの!もう、えっとー、45年前だよね。そのままなんてレトロでいいね!」
「うん。ここさ、泊まれるんだ」
「え?」
「民泊みたいなの、やっててさ、今日からここに泊まるんだ、2人で」
「え?今日からって……」
「温泉じゃなくてごめん!でも海鮮料理は僕がつくるよ。まかしといて!」
「そういうことじゃなくて!今日からって、いつまで?」
「うん」
「うんじゃなくて、いつまで泊まるの?義也、帰らないと。奥さん待ってるんでしょ?昨日だって泊まったんだし。聞けなかったけど、帰らないといけないでしょ?」
「いいんだ。沙菜といる。ここで、この思い出の場所で沙菜と一緒に過ごしたいんだ」
「義也……嬉しいよ。でも、そんなのダメでしょ?帰らないと!」
「沙菜、聞いて」
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