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「お母さん、電話、出なかった」
「そう……」
「また、夜にでも電話してみるね。携帯あずかるよ」
「うん、ありがとう」
2人が帰っていった。
連絡、とれなかったんだ……
番号、変えたのかな。
仕事中で忙しかっただけかな?
奥さんが側にいた?
それとも、まさか、私より先に……
不安しかない。悪いことばかり考えてしまう。
今は義也との大事な思い出を1つずつ、思いだしていこう。
会えた時に戸惑ったりしないように。忘れた、なんて思われないように。
えっと……
この前会った50歳の時、ほんとにドキドキしたなぁ。
うふふっ、私、なかなか話し出せなかった。自分から話があるって言ったのにね。そしたら義也、優しい眼差しで私を見ていた。話し出すの、待ってくれてたな。
死ぬ前に会いたいっていったら、困ってたな。ほんと、正直な人!顔にすぐ出る。そんなとこが好きなんだけどね。
中学の時、みんなの前で付き合ってるって言ってくれた時、あっ違う! 小学生で年賀状告白された時からだな、変わってない義也のいいとこ。
同級生としてっていったらホッとした顔してた。それも正直!
なんか笑っちゃうよ!私だけを見ていてくれてないことは、とても寂しいことなのに、そういうとこ、なんか納得しちゃう。
義也だなーってね。
どうしてなんだろう?
何故義也に会いたいんだろう?
大切な人だから?どうしてそんなに大切になったんだろう?
いつもいつも夢に出て来て、寂しくて辛い時に、いつもいつも現れて、貴方を思い出してしまうじゃない……
そしたらそれだけで終わらない。私の気持ちは義也に向かってしまう。
義也なら私の寂しさを埋めてくれる。絶対そう。そう確信していた。私は確信犯だ。あわよくば、義也と一緒に生きていきたい、いつもそう思っていた。
誰でもよかった?子供の頃から知ってるから、他を探すより簡単な気がした?そうかもしれない。でも、夢に出てこなかったら、会いたくもならないし、そもそも思いださずにずっと生きてきたはず。
大事な時に夢に出てくるのは、私の心の中にずっといたから。忘れてなくて、記憶をちょっと隅においやってたけど、やっぱり大事に取っておいて、いざっていう時には貴方が夢に出て来て、いるよ!俺がいるよ!って主張してくれて、私は昔の記憶を、今のものとしてつなげてきたんだ。
ごめんね、義也……
ずるいよね、私。都合のいい時だけ会いたいなんて言って。
いつも我儘ばかり言って、貴方を困らせてた。
それまで他の男たちと散々関係持ってきたのに。結婚して子供産んで、色んな男と寝てきたのに。
一度も寝てない貴方のこと、義也のことだけは忘れることが出来なくて、もしかしたら、関係持ってたら普通に忘れてたのかな。
そうなのかな……
わかんないな……
でも、したい、義也と。ずっとそう思ってたよ……
前に会った時だって、私から抱き着いて襲ってしまいたい衝動を、ずっと我慢しながら話してたんだから。
今だって、体が思うように動かなくたって、
義也、貴方を思うだけで、体が疼くよ……
だけど私から言う勇気は、今はもうないの。
貴方は必ず断るから。
いつだったかのように、必ずダメっていうから。
わかってる。
わかってるけどね……
会いたいよ……
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