義也の気持ち

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そうなんだ…… 沙菜…… もうあれから13年も経つんだね。 もう63歳だよ。沙菜も今日で63歳だね。 あの時、自分の方がきっと先だからって言ってたね。 ほんとにそうなるなんて…… お見舞いに行く約束、こんなに早く守ることになってしまって…… 年取って、2人共が独りぼっちだったら、一緒に暮らそうって約束、 それもしたよね。 僕はそっちを守りたかったのにな。 沙菜、君は僕にとって、特別な人なんだよ。 なのに僕は、沙菜が寂しい時、辛い時、ほんの少ししか側にいてあげられなくて、君が泣いていても、どうしてあげることも出来なくて、僕が謝らないといけないのに、いつも沙菜がごめんって言ってた。自分の勝手で呼び出してるって気にしてたね。でも、違うんだ。僕は嬉しかったんだ。僕を忘れずにいてくれて、僕を頼ってくれて、何より僕を大切に思っていてくれて。だから会いに行ったんだ。家族に嘘をついてでも、会いたかったんだ。沙菜と繋がっていたかったんだ。 知ってたかい?僕がそう思っていたこと。 僕が勝手なんだ。僕が会いに行かなければ、沙菜は苦しむことはなかった。僕のことなんて忘れて、ずっとそばにいてくれる人を見つけていたに違いないんだ。でも断る勇気がなかった。会いたかったから。沙菜に会いたいって言ってもらうと、僕も会いたくてたまらなくなって、断ることなんて出来なかった。沙菜を支えてあげたい、辛さや寂しさを和らげてあげたい、そんな出来もしないことを考えてしまって、結局あの時だって、一線を越えることが出来なくて、沙菜を余計に苦しめてしまった。 ごめんね、沙菜。僕は沙菜の心の中にずっと居続けたいと願ってしまったんだ。沙菜と体を重ね合いたい、したい、って思いながらも、家庭を優先してしまっていたのにね。ほんとにごめんね。でもね、僕は今だって沙菜のこと、ギュッて抱きしめたいって思ってるんだ。沙菜のことを考えると、体が熱くなってきて疼くんだ。 自分の本当の気持ちをちゃんと伝えておけばよかったね。 いや、違うのかもしれない…… 伝えてしまったら、一線を越えてしまったら、僕たちはどうなっていたんだろう…… わからないな…… 沙菜、それでも会いに行くよ。 約束だからじゃない。会いたいんだ。 沙菜に会いたいんだ…… 待ってて……
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