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私はいつの間にか眠ってしまったらしい。
右には義也が眠っている。
そう、腕枕をしてくれたんだ。だから私は安心して眠ってしまったんだ。
こんな風に一緒に時間を過ごせるなんて思っていなかった。お見舞いに来てくれるだろうとは思っていたが、すぐに帰ってしまうと思っていた。なのに、今、義也は私の隣にいる。もうすぐ夜があけようというのに。
こんなに長い時間一緒にいたのは、初めてだ。子供の頃から今までを思い出してみても、やっぱり初めてだ。腕枕だってもちろん初めて。ドキドキよりも安心感。これも今までと違う初めての感覚。
体の関係を求めていたはずなのに、側にいてくれることだけで満たされている。とても幸せ…… ありがとう、義也。大好きだよ……
だけど大丈夫なのかな?義也は、ここにいていいのかな?帰らないで欲しい。私とずっと一緒にいて欲しい。私を選んでほしい。こんな自分なのに何考えてんだろう。バカだな……
「ん、んーん。起きてたんだね、おはよう沙菜」
「おはよう、義也」
「もう朝だね。朝焼けが綺麗だ。ほら、見て、沙菜」
「うん。とても綺麗。今日は特別綺麗」
「沙菜、今日は忙しいよ。出かける支度をするんだ」
「え?何言ってるの?」
「2人で旅行に行くんだ。温泉だよ、温泉!部屋に露天風呂が付いてる宿を見つけたんだ。わりと近いんだよ。料理も海鮮が美味しいって評判らしいよ。沙菜、エビ好きだろ?マックいくと、いっつもエビバーガーだもんな!」
「いっつもって、そんなに何回も一緒に行ってないでしょ!」
「そうだっけ??」
「そうだよ!でもエビ好き……」
「だろ?はっはっは!じゃあ決まりだ!」
「え、えー だって、そんな急に……」
「大丈夫だよ。僕がいるんだから。僕といっしょだからね」
「う、うん」
旅行に行く、ということよりも、義也は帰らなくていいのか?が気になっていた。でも聞けなかった。一緒にいたい。初めての2人旅行。
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