緑内障と言われて

第一章 予期せぬ診断

　私は促されるままに機材が置かれた席へと座り、両目でレンズを覗いた。奥には気球の写真が描かれていた。気球の画像はぼやけており、しばらくするとくっきりと瞳に映った。おそらくはピントを合わせて近視の度合いを見ているのだろう。ピント合わせの検査が終わった後、私は今度は別な椅子へと腰をかける。目の前にあるのはおなじみの視力検査用のボードだ。裸眼の状態では検査版の最上段にある一番大きなランドルト環もぼやける私の眼には早々と視力検査用の眼鏡がかけられ、レンズによって近視、乱視の矯正が行われる。両目とも一・二まで見えたところで視力検査が終了した。

　次に行われたのは眼圧検査だった。目の前にある台にあごを載せると、私の眼と眼圧系の突起が対峙した。プシュッという音とともに瞳に空気が当たる。右眼の検査が終わると、今度は左眼に同じように空気が当てられた。この他にも試験紙をまぶたに挟んで涙の量を測る検査や、色とりどりの模様の中に書かれた数字を確認し、色覚異常を見るための検査などを経て、看護師が私に言った。

「それでは次に、別室で視野検査を行いますね」

　私は言われるままに、暗室へと足を踏み入れた。
　台の上にあごを載せ、機械の中を右目でのぞき込む。あごの高さがフィットするまで台の高さが上下され、右目が機械の中央の光が見えるまで調節された。

「それでは眼鏡を外してください」

　看護師に促され、私は眼鏡を外す。看護師は私の左眼にガーゼを当て、テープでそれを止めた。そしてその直後に私は機材とコードで結ばれているボタンを手渡された。

「この中で光がランダムに点滅しますので、光が点滅したと思ったらボタンを押してください。なお様々な場所に光が点滅しますが、あごは動かさないようにしてください」

　看護師に指示されるまま、私はボタンを右手に握った。右、左上、右下、中央……光を発している信号音はほぼ一定の間隔で聞こえてくるのだが、肝心の光が見えたり見えなかったりしている。その光もある程度見えるものと、ほとんど霞んで見えないものなど様々だ。ただ一つだけ言えるのは、全体的に画面がぼやけて見えているために光を眼で追うだけで必死だということだ。

　最後に行ったのは眼の写真撮影検査だ。看護師さんの言うままに私は撮影機材の前へと腰を下ろし、レンズの前にある台へとあごを載せた。

「少し眩しくなりますよ」

　看護師の言葉からしばらくして、目の前に白くまばゆい光が走った。右目の撮影が終わると、今度は左眼の撮影が行われる。

「これですべての検査が終わりです。それではしばらくお待ちくださいね」

　看護師にそう告げられ、私は暗い検査室をあとにした。