7.咲良の決意

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 次から次へと溢れる涙を必死に拭き取る。泣きながら歩くなんて、周りの人にびっくりされちゃう。だから泣き止まなきゃ。いい思い出ができたと思おう、手が届かない人と一時だけでも夫婦になれた。  結婚式を挙げて、パーティーでは妻ですと紹介してもらえたんだから。  その思い出だけで生きていける。 「……実家、帰ろうかな」  ポツリと呟く。昨日の今日の展開で、まだお母さんたちには何も言えてない。帰ったらきっとお母さんは優しく受け入れてくれるだろう。 「でも、喧嘩するだろうなあ」  絶対お父さんと喧嘩するのは目に見えてる。私のせいでそんな姿になるの見たくないんだけど……。  しばらく安いビジネスホテルとかに泊まろうかな。今は実家に帰って蒼一さんと離婚しただなんて説明する力はない。そうだ、そうしよう。一人でぼうっと過ごすんだ。  鼻水さえ垂らしながら私はフラフラと歩き続ける。スマホでどこかホテルを探そうか、とぼんやり鞄を漁った時、背後から声がきこえた。 「咲良?」
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