6903人が本棚に入れています
本棚に追加
それに反応して振り返る。立っていたのは蓮也だった。彼だと気づいた瞬間慌てて顔を背ける。こんな情けない顔を見られるなんてごめんだったのだ。
だが彼にはしっかり見られた後らしい。驚いた表情で私に近づいた。
「ど、どうしたんだよ」
「いや、ちょっと」
「何その荷物? なんかあったのか? 咲良?」
焦ったように聞いてくる彼に私は黙り込んだ。でも、懐かしいその声はやけに私の涙をさそってくれる。再び一気に泣けてきてしまう。
もう終わったんだ。蒼一さんと私の関係は。
最後くらい好きでしたって、言えばよかったのかな。
嗚咽を漏らしながら泣く私を、蓮也は黙って待っていてくれた。行き交う人たちは不思議そうに私たちを見てきたが、彼は何も気にする様子もなく、ただただ私の涙が止まるのを待っていてくれたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!