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咲良は他に想いを寄せる男性がいるはず。なのにあんなことをするだなんて、自分の理解が追いつかない。
「咲良さんに直接聞けばいいじゃないですか」
「……きくつもりだけど、今は話してくれそうにないから」
「あら。なんでも言い合えるってわけじゃないんですね」
「……仲がよくてもそういうこともある」
苦し紛れにそう答えたが、彼女は微笑んだまま何も言わなかった。何だか居心地が悪く感じ、そのまま背を向ける。顔を見ないまま告げた。
「違ったならいいんだ、ごめん。時間を取らせた」
「いいえ。これで失礼しますね」
新田さんはそういうとあっさりこの場から去っていった。いなくなったことにホッとする。そうか、彼女じゃなかったか。あの誕生日の日のことが引っかかっていたのだが。
深いため息をついた。もう午後は休みをとって帰ろうか、と考える。このままでは仕事なんて手につかないし、今はとにかく咲良と話したい。あの子はいつも周りのことを考えて自分を蔑ろにする癖がある。これ以上追い詰めてほしくない。
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