6903人が本棚に入れています
本棚に追加
そう心に決めたとき、ポケットに入っているスマホが震えたことに気がついた。手に取り出し画面を覗き込むと同時に息をのむ。それは母からだった。
『仕事終わったら、うちに寄ってね』
簡潔にそうメッセージが入っていた。そこで私はついに確信する。
咲良のあの行動の原因は母だったか。きっと私の知らぬ間に咲良と何かあったのだ。頭を抱えて舌打ちをする。
こんなことならもっと強く釘を刺しておけばよかった。時間が経てば母の気持ちも落ち着くだろうと甘く考えていた自分が悪い。
「くそ」
スマホをポケットにしまい込むと、私はそのまま会議室を出た。仕事なんてしてられる余裕はなかった。乱暴に帰りの支度をすると、仲間に帰る趣旨を告げ仕事の指示だけ行うと、私は即座に会社を出た。
自分の家に帰るのはかなり久々だった。
見慣れているはずの白い屋敷が、何だか恐ろしいもののように感じる。私は最近使っていなかった鍵を取り出して玄関の扉を開けると、そのままリビングへ足早にすすんだ。
扉を開けると、広いソファに母が一人紅茶を飲んでいた。私の存在に気づくと、少し驚いたような顔でティーカップを置く。
最初のコメントを投稿しよう!