8.蒼一の決意

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「急ではないですよ。ずっと考えていました。ええ、そうね、あなた方の違和感たっぷりの結婚式に参加している時からずっとです。  綾乃さんがいなくなって、あの時は咲良さんに代わりをお願いするしかありませんでした。それは私もわかってるし咲良さんに感謝してますよ。緊張で顔がこわばったちっとも幸せそうじゃない花嫁」 「……確かに始まりはあんな形でした。でも僕たちは」 「様子見をしていました。果たしてどうなるのかと。あのパーティーの時、うまく取り繕ってましたが分かりましたよ、あなた方は結局夫婦ごっこなんだってね」    自分の胸が痛んだのに気がつく。ごっこ、という言葉がナイフのようだった。  私たちのどこが不自然だったのだろう。自分達では分からなかった。咲良はパーティーの時とてもよくやってくれていたし、周りも褒めちぎっていた。それとも、当事者には分からない距離感が出ているのだろうか。  そう落ち込みつつ、論点がずれていることに気がつく。私は自分を奮い立たせ再度母にきいた。 「それで? それを咲良に言ったんですか」 「昨日咲良さんが落ち込んでいたって?」
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