6901人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女の言葉は自分の心を突いた。その傷から出血した錯覚すら覚える。なぜなら間違っていなかったからだ。
他に好きな男性がいたのに無理矢理結婚させられた咲良。こんな形でなくても、いつか終わりは来ていただろう。ようやく解放された彼女を追いかけてどうするつもりだというのか。
一瞬戸惑い揺れた自分だが、すぐに首を振った。
……そうじゃない、そうじゃないんだ。
「……咲良が終わりにしたいというならそれでいいんだ。でも、そうなら彼女の口から全てを聞きたい。そして、僕もちゃんと自分の気持ちを伝えたい」
ずっと逃げ続けていた、秘めた気持ちを出すことを。それは咲良に失望され拒絶されるのが怖い自分の弱さからだ。
でもきちんと伝えなければならない。遅すぎる今だが、それでも最後にキチンと言って終わりにせねば。
新田さんは真剣な顔でこちらを見上げている。不服そうな顔だった。その背後から母の厳しい声が聞こえる。
「今更。そんなことをして何の意味が? 過去より未来を見なさい」
「まだ過去のことじゃない。
それと。咲良と終わったとしても僕は再婚なんて考えてない。咲良以外の人と結婚なんてありえないから。彼女と別れたらもう結婚なんてしない、跡継ぎなんて知らない」
最初のコメントを投稿しよう!