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「そんなことをしてでも咲良と結婚したかったのは僕です。……結果あの子を傷つけただけだったけど、それも謝らなければ」
「待ちなさい! そんな、ありえません。他の男とあんな写真を撮られるような人じゃ」
母が叫んだのを聞いた瞬間、私は振り返って新田茉莉子の顔を見た。彼女は少し気まずそうに私から視線を逸らす。
……そういうことか。納得がいった。
おかしいと思った、いくら綾乃とタイプが似ているからといって、新田茉莉子を天海家の嫁にしようとするなんて。だが先ほどの母の発言を聞いて理解する。
恐らく、蓮也と咲良のあの写真を母に見せたのだ。元々あまりよく思っていなかった咲良のあんなシーンを見て、母は私たちの仲を裂くことに躍起になったんだ。
人間、共通の敵がいると特に強く結託する傾向がある。だから母はこんなにも新田茉莉子を信用しているのか。
私は一つため息をついて答えた。
「写真、ですか。僕も見ましたよ」
「あなたも知っているの? なのになぜ黙ってるの! 他の男とあんなことを」
「意外ですね。母さんほど洞察力のある人が、あれを咲良の不貞と思ったんですか?
写真をよく見れば分かります、咲良は驚いたように棒立ちになっているだけ。男性が一方的に抱きついているだけです。咲良には落ち度はありません」
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