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「……な」
「頭に血がのぼって冷静さを欠いているのでは。少しは落ち着いたらどうですか」
私はそばにいる新田茉莉子を強い視線で見た。彼女は何か言いたげだが、口をつぐむ。あの写真を手に入れた時から、こうなることを考えて動いていたのかもしれない。
私はつかつかと母に歩み寄り、彼女の手元に置かれている緑の紙を手に取った。はっとした相手は慌てて奪い返そうとする。それをサラリと避けると、私は離婚届をビリビリに破り捨てた。
「蒼一!」
「もし……咲良が本当に離婚を望んでいたとしても、僕のみてないところで書いたこんなものは無効だ。二人で話し、しっかりお互い気持ちを伝えた上で目の前で書いてもらう。こんなゴミ不要だ」
その場に紙屑を捨てる。再び二人の方を向いて断言した。
「僕は人を陥れるような人とは絶対に結婚しない。ごめんだね。
こうしてくだらない人間と話しているだけで吐きそうだ」
私はそれだけ言い残すと、今度こそリビングを飛び出した。自分の名を呼ぶ声を背中に感じたが無視した。
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