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情けない自分の声が家に響き渡る。しかしそれに返事が返ってくることはなかった。乱暴に靴を脱ぎ捨てて部屋へ向かう。
その扉を叩いてノックした。
「咲良ちゃん? 聞いてほしいことがある、お願い顔を見せて」
その言葉にも、何の反応はなかった。しんとした静けさが流れるのみ。私はまさかと思い、ドアノブに手を伸ばした。
鍵はかかっておらず安易にそれは開いた。部屋の中を見渡すと、すっきりした空間が広がっている。家具はそのままだが、これは。
中に入りクローゼットを開けた。そこにあったのは、あのパーティーのために購入したネイビーのドレスだけがかかっていた。
愕然とする。
遅かった、もういない。
振り返りポケットからスマホを取り出した。先ほどもかけた咲良の連絡先を呼び出してコールするも、やはり相手は出ることなかった。
そうなれば実家に帰ったのだろう。私は恥を覚悟し咲良の母親へ電話した。未だかつてほとんど使ったことのない番号だった。
しばらくすると母親は電話に出た。挨拶もそこそこに本題を切り出すと、彼女は私の母から事情を聞いていたらしく離婚のことは知っていた。
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