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小さなアパートの扉が開かれる。蓮也の後ろからこっそり中を覗き込むと、大きなサイズなスニーカーやヒールの靴が乱雑に並べられていた。隣にある靴箱には収まり切らない分らしい。蓮也が申し訳なさそうに言った。
「ごめん、狭いし散らかってる」
「あ、全然……」
私がそう答えたとき、部屋の内部から声がした。
「あれ蓮也ー? どーしたのあんた」
短い廊下の奥に見えるリビングらしきところから、ひょこっと女の人の顔が出てきた。私は慌てて頭を下げる。
ロングヘアに少しつり目のキリッとした人。蓮也のお姉さんが目を丸くして私を見た。
「あれ。見たことあるね、えーと」
「あま……藤田咲良です」
「あーそうだ咲良ちゃんだ! へー久しぶりじゃーん!」
お姉さんはニコニコしてこちらに近づいてきた。高校生の時、会ったことのある蓮也のお姉さんは全く変わらない姿でなぜかほっとした。高校の頃、みんなで蓮也の家に遊びに行った時、フレンドリーなお姉さんも混じって遊んだことがあるのだ。
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