9.咲良の答え

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 蓮也は気まずそうに私を振り返った。てっきりお姉さんがいるものと思って私を誘ったのだ。二人きりになってしまうが、ここでじゃあ帰りますというのもなんだか言いにくい。  ……それに、私はもうそういうことを気にする必要はない。だって、離婚しちゃったから。  力なく微笑んでみせる。蓮也は察したようで、私を中へ促した。 「狭いけど。上がって」 「お邪魔します」  私は頭を下げて靴を脱ぐ。お姉さんがじっとこちらを見ているのに気がつく。蓮也は気づいていないのか、何事もないように言った。 「とりあえず荷物そこ置いといたら」 「あ、ごめん場所取るけど……」 「いいよ。こっち」  多くなってしまった荷物を玄関の隅に置かせてもらう。お姉さんが不思議そうに見ているのはこれだ。どう見ても訳ありなのは一目でわかる荷物の量。  それでも彼女は何も言わずにっこり笑った。 「入って入って〜お茶とお菓子ぐらい出せるよ!」 「急に来たのにすみません」 「いいって。どうぞー」
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