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「ったく口が悪い弟だなほんと。可愛い妹とかならよかったのに」
ブツブツいいながらお姉さんは鞄を手にする。そして私にだけ爽やかな顔で手を振ると、そのまま家を出て行ってしまったのだ。
私はといえば、二人の仲のよさにまだ笑っていた。私とお姉ちゃんとはまた違ったタイプの姉弟。でも、姉には敵わないという立場はすごく理解できる。
蓮也は気まずそうに言った。
「ごめんうるさくて」
「全然。相変わらず面白いお姉さんだよね。私好きだな、もっと話したかった」
「姉ちゃんも言ってたけど泊まってけよ。夜ゆっくり飯でも食って話せばいいじゃん」
サラリと誘ってくれたことに感謝し小さく頷いた。目の前に出されたお茶をそっと一口啜る。少し苦い緑茶が私の心を少しだけ落ち着けてくれた。
隣に座った蓮也も、自分でいれたと見られるグラスのお茶を飲んでいた。私の前に置かれた焼き菓子を手に取り、無言でもぐもぐと食べ始める。彼のいつもと変わらない態度に、私はなんだ嬉しく感じて微笑んだ。
そんなこちらの様子に気づき、蓮也が言う。
「なに?」
「ううん。普通に接してくれて蓮也は優しいなあって」
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