9.咲良の答え

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「別に。中学からの長い付き合いじゃん」  甘そうなお菓子を食べながらやや早口で蓮也が言った。私は両手でお茶を包み、少しだけ俯く。  一度は私のことを好きだと言ってくれた蓮也に、こんな話をしていいのかという疑問はある。ここまで着いてきてしまいながら、自分の行動が軽薄なんじゃないかと思うが、それでも今は他に頼れる人がいなかった。  私たちの奇妙な結婚のきっかけを知る知人は蓮也しかいない。結局他の友達にも説明できていなかったんだ。  この約三ヶ月、ただ必死で。毎日が必死で必死で、何も気が回らなかった。結婚したという事実を友達に説明することさえできなかった。 「……離婚した」  私がポツリと呟くと、お菓子を食べていた蓮也の手がピタリと止まった。彼はゆっくりこちらを見る。苦笑して続ける。 「朝離婚届を渡してきたんだ。蒼一さんのお母さんにだけど。だからまだ提出してないから正式にじゃないけど、そのうち成立すると思う」 「……蒼一って人はそれでいいって?」 「ううん。何も言わずに出てきちゃった。きっと驚いてるけど、でも蒼一さんが離婚を拒否する理由はないもん、結果は変わらないと思う」
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