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蒼一さんは他に大切に思う人がいるんだ。こんな形だけの夫婦生活にピリオドを打つことには賛成するだろう。ただ、一人で勝手に決めたことだけは怒るだろうけど。
蓮也は黙っていた。きっとなんて返答していいのかわからなかったんだと思う。私は食欲がなかったけど、出されたお菓子に手をつけてみる。せっかくもらったのに食べないと申し訳ない。
甘い味を口に入れて頬張っているところに、蓮也が声を出した。
「……あのさ」
「え?」
「じゃあ、なんであんなに泣いてたの」
彼はまっすぐな目でこちらを見ていた。その視線に囚われたようにこちらもピタリと動きを止める。蓮也は真剣な面持ちで続けた。
「あんなに泣いてた。姉ちゃんの身代わりの政略結婚だったんだろ? 早いとこ離婚出来てよかったじゃんって俺は思ったけど違うの?」
「そ、れ、は」
「なんかあったの?」
蓮也の質問に、私は何も答えられなかった。蒼一さんが好きだったから、と答えてしまおうかとも思ったが、なかなか言葉に出てこない。
困っている私を見て蓮也が慌てる。
「ごめんごめん、言いたくないならいい」
「ううん」
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