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「うんわかるよ。私とお姉ちゃんは似てなかったもん」
「あーまあ、似てない、かな」
言いにくそうに蓮也はモゴモゴと答えた。私は小さく笑って答えた。
「自覚してるからいいの。お姉ちゃんは美人でしっかり者だったから。正反対だって、子供の頃から思ってた」
「美人? ではあるかもだけど、俺はキツそうで無理だよ。あ、ごめん悪口じゃないんだけど」
「変わってるね。私の周りの人はみんなお姉ちゃんに憧れてたよ。蒼一さんだって」
言いかけて止まる。蒼一さんの話題なんて出すつもりはこれっぽっちもなかったのに、つい名前を出してしまった。
お姉ちゃんと一緒にいる時の蒼一さんは子供みたいだった。私には結局一度もそんな顔を見せてくれなかったけど。子供の頃からあれだけ長い時間一緒にいたんだ、きっとすごく好きだったはず。
……その代わりに、なりたかった。
涙で目のまえが滲んでくる。そんな様子に気づいた蓮也が隣で戸惑っているのを感じた。必死に鼻を啜りながら答えた。
「ごめん、やっぱりお姉ちゃんにはなれなかったなって思っただけなの、私あんな器用じゃないししっかりしてないから」
「そんなこと」
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