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「馬鹿だよね、お姉ちゃんの婚約者だって知ってたのに初恋だったんだよ。七歳も年上だし、相手にされないことなんて考えなくてもわかるのに」
「……そ、んな」
「それでも子供の頃からずっと好きだったから……」
私は両手で顔を覆って泣いた。
そう、ずっと彼が好きだった。叶わないと思っていた片想いが叶ったんだと結婚式の日は喜んだ。
でも違うんだね。形だけの結婚じゃどうにもならない。心と心が通じ合えるわけじゃないんだ。私は甘すぎた。
自分の嗚咽の音が部屋に響く。蓮也にこんなことを言うなんてダメだとわかってるのに、もう止まれなかった。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
泣き続ける私に、蓮也は黙っていた。ただ涙をこぼす私をみている。隣に蓮也が座ってる空間が心地良かった。
蓮也を好きだったらよかったのにな、と思った。
一緒にいて楽で、私を好きでいてくれて、いいやつだし気も合う。きっと付き合ったら上手くやっていけるだろうなと想像もつく。
それでも———私が選んだのは、あの人だった。
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