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ぼんやりとそう考える。そういえば、実家に連絡したままスマホも見てないや。置きっぱなしだった鞄からそれを取り出してみると、いくつか着信やメッセージがあって狼狽えた。お母さんと、それから蒼一さんからも来ていたからだ。
聞いたんだな、離婚のこと。
多分何も相談なしでこうなったことに戸惑ってるだろう。彼は優しいから、ちゃんと私から話を聞こうと思ってくれたんだ。
じっとスマホの画面を見つめていると、横にいた蓮也がちらりとこちらをみた。
「電話鳴ってた。起こすのもと思って何もしなかったけど」
「うん……」
「蒼一って人?」
「うん、離婚のこと聞いて話そうとしてくれたのかも」
私はそのままスマホをしまった。すると蓮也が言った。
「話さなくていいの。好きだったこと」
驚きで隣をみた。彼はテレビの方を向いていたが、その目がお笑い番組なんて見ていないことは分かっていた。私は小さく首を振って言う。
「言えるわけないよ。困らせちゃうだけだよ。蒼一さんは優しいから、きっと」
「困らせて何が悪いの?」
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