9.咲良の答え

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 蓮也がこちらを振り返る。彼はどこか切なそうにしていた。それでも私から目を逸らすことなくじっとこちらを見ている。 「困らせればいいじゃん。人間誰かを困らせずに生きていくなんて無理だよ。咲良は人に気を遣いすぎだと思う」 「で、でも。お姉ちゃんがいなくなって喜んでたなんて、そんな性格悪いところ見せたくない」 「俺だってさっき言ったはずだよ、咲良が離婚して喜んでるって。そんな俺を見て引いた?」 「え、別にそれは」 「そんなもんなんだって人間。それに、あの人とはもう会わないつもりなんだろ? じゃあ最後くらい幻滅されたっていいじゃん。  何も言わずに出てきたなんて、あとで後悔すると思う」  蓮也の低い声が心に落ちた。  確かにそう。何も相談なしに蒼一さんと別れた。昨晩あんなことがあって、彼と顔を合わせづらいし今更全てを話すのも辛い。  でも……黙ってるままなんて、やっぱりよくないのかな。このむしゃくしゃした気持ちも、悲しい涙も、全部曝け出せたらスッキリするんだろうか。
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