6895人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
蓮也がこちらを振り返る。彼はどこか切なそうにしていた。それでも私から目を逸らすことなくじっとこちらを見ている。
「困らせればいいじゃん。人間誰かを困らせずに生きていくなんて無理だよ。咲良は人に気を遣いすぎだと思う」
「で、でも。お姉ちゃんがいなくなって喜んでたなんて、そんな性格悪いところ見せたくない」
「俺だってさっき言ったはずだよ、咲良が離婚して喜んでるって。そんな俺を見て引いた?」
「え、別にそれは」
「そんなもんなんだって人間。それに、あの人とはもう会わないつもりなんだろ? じゃあ最後くらい幻滅されたっていいじゃん。
何も言わずに出てきたなんて、あとで後悔すると思う」
蓮也の低い声が心に落ちた。
確かにそう。何も相談なしに蒼一さんと別れた。昨晩あんなことがあって、彼と顔を合わせづらいし今更全てを話すのも辛い。
でも……黙ってるままなんて、やっぱりよくないのかな。このむしゃくしゃした気持ちも、悲しい涙も、全部曝け出せたらスッキリするんだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!