9.咲良の答え

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 遠くで玄関が開かれる音がした。その後、何か話している声が僅かに流れてくる。でも内容まではわからないし、相手がどんな人なのかもいまいちよく聞こえない。テレビの雑音がちょうど邪魔をしていた。もしかしてうるさいかな、そう心配になった私は、置いてあったリモコンで音量を下げた。  すると聞こえてきた声が、なんだかひっ迫しているようなものであることに気がついた。言い争い、とまではいかないけど、なんだか不穏な……?  私は静かに立ち上がって恐る恐る廊下に近づいてみる。閉められた扉をそうっと開き隙間から覗いてみた。が、その瞬間玄関に立っている人を見て頭が真っ白になる。そして相手も、私の存在に気づいたのだ。 「咲良ちゃん!」  慌てて顔を引っ込め、背を向けてその場にしゃがみ込んだ。バクバクと心臓がおおきく鳴り響く。  嘘、どうして蒼一さんが? なんでここが。ううん、それより何をしに来たんだろう。  もう一度顔を見て話したいと思っていたくせに、予想外のことにただ驚きで呆然とする。そんな私の背中に、蒼一さんの声がぶつけられた。 「咲良ちゃん、聞いてほしい。話したいことがある、出てきて!」
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