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外はもう夜だ。心細いライトが道を照らしている。空はほとんどが雲で覆われていて星は見えなかった。でも、ほんの少しの隙間から満月がひっそりと顔を出していて私たちを見守っていた。転ばないように必死に足を回転させながら、蒼一さんに言わなくてはいけないことがあるんだと思い出す。
ただ、あまりに急だったから、心の準備も何もできていない。それに今、蒼一さんに話す雰囲気でもない。どこかピリピリしてる空気に、告白なんかできそうになかった。
ずんずんと二人進んでいく。人気のない静かなアパートの前には、蒼一さんの車がひっそり止まっていた。いまだ私の手首を握って進み続ける背中に、私は声をかける。
「あの、蒼一さん!? わた、私荷物が」
「また取りにくればいい」
「いや、お邪魔してたのにお礼も言えてなくて、蓮也とお姉」
私が蓮也の名前を出した途端、蒼一さんが突然足を止めた。ずっと引っ張られていた私は止まりきれず、彼の背中に勢いよくぶつかってしまう。よろめきながら体制を整えると、蒼一さんが振り返った。ぼんやりとした夜の世界に、余裕のなさそうな彼の表情が浮かび上がる。
突如、彼は私を両手に抱きしめた。息が止まりそうなほど強い力だった。唖然とする。
背中に回されたその腕は熱い。いつだったか家で彼に抱擁されたことがあった。立ちくらみだ、と笑っていたけれど、では一体これは何?
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