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真剣な目から、彼が嘘を言っていないなんてわかっていた。いや、元々彼はこんなタチの悪い冗談を言う人ではない。
ただどうしても素直になれなかった。一緒に暮らしていても同居人状態で、誕生日も他の人に祝ってもらい、最後まで触れてくれなかった彼の告白は信じ難い。
ついふらつく足で数歩後退した。そんな私を見て蒼一さんが悲しげに眉を顰める。だがすぐに、優しく微笑んだ。
「咲良ちゃん。僕はね、綾乃の居場所を知ってるんだ」
「……え!?」
突然の真実に声を漏らした。お姉ちゃんの居場所は、結局両親も見つけ出せていない。それをどうして蒼一さんが?
「な、なんで蒼一さんが? お姉ちゃんは今どこにいるんですか?」
「大丈夫、楽しく過ごしている。僕はそのサポートをしてる」
「え?」
「幻滅される覚悟で言う。
あの結婚式は僕と綾乃が仕組んだ」
次から次へと、蒼一さんは私の想定外の言葉ばかり出した。口を開けたまま、私はただ唖然とするしかない。
「え?」
「元々綾乃とは仲のいい友達で恋愛感情なんてなかった。お互いにだ。
もし……綾乃が当日いなくなれば、周りに気を遣う咲良ちゃんが立候補するんじゃないかって、そこまで考えて実行した」
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