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結婚式の日のことが蘇る。お姉ちゃんがいないと騒ぎになり、蒼一さんは困ったように俯いていた。彼と結婚できるチャンスを活かしたくて、私は立候補した。
お姉ちゃんの身代わりに、立候補したんだ。
やや似合わないドレスを着て知らない人たちの前で式を行った。それでも、隣に蒼一さんがいてくれたから乗り越えられた。
彼は私に数歩近づく。そして叱られた子供のような顔で言った。
「ごめん。僕はね、とっても狡くて酷い人間なんだ。
幻滅されるかもしれないと思って言えなかった。どうしても君のそばにいたかったから」
信じられない真実に、私はようやく彼の言葉を理解し始めた。
じゃあ、あの日お姉ちゃんが逃げることを知っていた。私がその代わりになることも想定されていた。
私が蒼一さんと結婚したのは、なるべくしてなったっていうこと?
私の顔を見て、蒼一さんは悲しげに苦笑した。そして再び手をとり、そのまま車に近づいていく。
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