9.咲良の答え

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 あれはあなただったから。蒼一さんだったから立候補したの。  私の初恋だったから。叶うはずのない恋だったから。お姉ちゃんが逃げ出したのを見て喜んだ黒い心があったから。 「狡いのは私です……お姉ちゃんがいなくなって、私は心の中で凄く喜んでた。私が蒼一さんと結婚できるんだって、その喜びでいっぱいだった。きっと心のどこかで、お姉ちゃんを羨んでたんです。  蒼一さんは狡くないし幻滅もしません。あなたの結婚相手に立候補したのは私です、そこに強要も何も存在しませんでした」 「咲良ちゃん」 「私なんです、ずっと好きだったのは、私の方なんです……!」  ポロポロと涙が流れた。再確認した想いが、涙となって溢れたのかもしれない。  好きになってはいけない人をずっと好きで、何度も諦めようとした。それでも捨てきれなかった想い。  苦手な料理を頑張りたいと思ったのも、家にいるだけで緊張してしまうのも、こんなに胸が苦しいのも、全ては蒼一さんが好きだったから。その答え以外何ものでもない。
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