9.咲良の答え

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「それまでの僕の態度がいけなかったんだ、咲良ちゃんは悪くない」 「でも。なんで蒼一さんを信じなかったんだろう。すごく簡単な答えだったのに、私」 「咲良ちゃん」  震える私の手を、蒼一さんが握った。そのぬくもりを感じただけで、ぴたりと自分の手が収まるのを自覚する。顔を上げると、蒼一さんがじっとこちらを見ていた。 「僕は遠回りしすぎた。臆病だったせいで、前に進むことを恐れてたから。  でももう迷わない。欲しいものはちゃんと欲しいと声を上げる。最初から全部やり直したい」  そう言った彼は、もう片方の手でポケットを漁った。何かを取り出して囁く。 「初めからこうすればよかったんだ」  大きな手がそっと開く。見覚えのあるものだ。傷ひとつない銀色にひかる小さな輪は、彼の手の真ん中で輝いていた。  あ、と小さく声を漏らす。たった一度だけ身につけた指輪だった。 「僕と結婚して。君と一緒にいたいから」  それはお姉ちゃんの身代わりなどではなく、私に向けられた言葉。  私はただ、無言で蒼一さんの顔と目の前にある指輪を交互に見つめた。喜びと切なさで声をなくしてしまった。
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