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せっかく止まった涙がまたこぼれ落ちる。そんな私を見て、彼は何も言わずに指輪をはめてくれた。左手の薬指がくすぐったくて、違和感だ。
輝く小さな石が、あんまりにも美しかった。それを目に焼き付けながら蒼一さんの顔を見上げてみれば、優しく微笑んでいた。
声にならない声ではい、と言い、私は何度も頷いた。
こんな言葉をもらえる日が来るなんて想像もしてなかった。だって、私たちの始まりは突然の結婚式から。心も通じ合えないまま過ごしてきた。好きですと言葉に出せずに押し殺す毎日だった。
流れる涙を、蒼一さんが再び拭いた。そして笑顔を無くし、少しだけ私から視線を逸らした。
「でも……もしかしたら。咲良ちゃんには苦労かけることもあるかもしれない」
「え?」
「思い描いていた生活にはならないかも。
それでも、僕の隣にいてくれますか」
真っ直ぐな瞳に見つめられ、一瞬息をのんだ。それは蒼一さんの言う『苦労をかける』なんて言葉のせいではなく、彼のガラス玉みたいな目があまりに綺麗だったからだ。
「蒼一さんが隣にいてくれるなら……私にとってどんな人生も幸せです」
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